第25回 ICT効果論 その7 生産性概念
ここ数回、ICT効果に関する議論をすすめてきましたが、生産性の概念を明確にしていませんでした。この概念は、ミクロ経済学というよりは、むしろ、経営学(または実務)でより利用されます。
生産性は、個別企業であれ、国家経済であれ、限られた資源をどれだけ有効に使えたを示す基本的な指標なので、経営者や政策立案者にとってもっとも重要な考え方のひとつです。
生産性は、ソローパラドクスを考える意味においても重要なので、生産性概念の整理をしてみました。
もっとも広義な概念は、①式と②式です。前者は、何かの入力(input)によって、何かの出力(output)が生まれるということを示しています。これは、もっとも基礎的な科学(自然科学も含めて)の考え方です。所与の条件が変わらなければ、入力が原因で、出力が結果といえます。他の用語でいえば、「刺激と反応」といえ、「SR」または「SOR」といわれているモデルになります。後者は、経済経営の言葉に変換されたものであり、分母が費用(Cost)で、分子が便益(Benefit)となります。ただし、分子は、「収入(Revenue)」、「利益(Profit)」、「効用(Utility)」、「効果(Effect)」でもよく、いろいろな領域ごと問題ごとに使い分けることになります。広くいえば、「CBA(Cost Benefit Analysis)」と考えることができます。
③式は、資本生産性です。「価値(Value)」を「資本(Capital)」で割って出します。他の言葉で言い換えると、資本一単位あたり(1円あたり)の価値の大きさをいいます。資本1円で、いくらの価値を創出するかということです。これも、④式から⑥式のように、分子を変えることもできますが、ここでは、価値のみを表しています。
④式から⑥式は、労働生産性を表しています。違いは、分子に何を設定するかどうかです。労働者一人当たりのなんらかの価値の創出を表しています。
⑦式と⑧式は、ICT生産性を表しています。⑦式は、主に、個別企業のICT投資の寄与を示しており、⑧式は、国家経済におけるICT資本の寄与を表してます。この場合、分母に、ICT労働者(従事者)を設定すれば、ICT労働生産性という式が導けます。
ソローパラドクスは、⑧式を基本に考えています。
では、すこし遠回りになってしまいましたが、次回、それを考えていきます。