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総合システム論 第34回 社会的知性仮説

 人生には、悩みが絶えませんが、そのかなりの部分は、人間事です。

 親子関係、兄弟関係、親戚関係、師弟関係、職場関係などなど。

 これらは、自分の能力や身体や容姿といった、いわば自分事ではなく、他人事なのです。他人とほどよい関係性の構築はなかなか骨の折れることです。気苦労が絶えないのです。でも、人間関係こそが、人の喜びでもあり、楽しみでもあります。

 前回は、ヒトが知性を発達させるために、道具やそれを使いこなすことで「心」が生まれたと述べました。科学的な知見の始まりといってもいいでしょう。

 いまひとつ重要な知性の発達をもたらしたものが、今回お話しする「社会的知性(Social intelligence)」です。

 今のわれわれの直系の先祖にあたるホモサピエンスは、アフリカに20万年前に誕生したと考えられています。そのころの彼らは、身体的な武器をもたないか弱い存在だったでしょう。そこで、ナイフや斧を作り、火を焚いて、自身を守っていたでしょう。しかし、食肉獣から、捕食されていたと考えられます。

 そのような自然環境下のなか、武器の制作とともに欠かせないのが、他者(仲間)の存在です。弱い存在であるホモサピエンスが生き残るためには、集団を作って自己と家族を守ることが必要でした。第32回に出てきた著書のなかに、「進化のある段階で霊長類の社会構造が複雑になるような選択圧がかかり、その結果として集団内での他個体との協力や駆け引きなどといった策略に必要な社会的な知性が選択されていった」と述べられています。

 よって、社会的知性仮説は、別名、「マキャベリ的知性仮説(Machiavellian intelligence hypothesis)」とも呼ばれています。

 人が、人になるためには、多くの人々と接することが必要です。そして、人の社会のなかで生き残ることが必要です。そのためには、強い絆で結ばれたり、または弱い絆も必要となります。そのためには、他人の真似をしていくことも必要です。真似るは、学ぶと同じことです。一方、他人からの攻撃から自身を守ることも必要になります。だましたり、だまされながら、社会ゲームで勝ち残ることも複雑な社会では欠かすことができない能力です。

 認知心理学や社会心理学は、その社会の中での人の心のあり方を教えてくれます。

 それの経済経営領域への応用が行動経済学です。

 その場合、合理性や知性のほかに、人間が人類史のなかで獲得していった能力があります。

 それが、ヒューリスティックス(バイアス)であったり、他者性なのです。

 次回は、他者性をまなざしという観点から考えていきます。

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