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マクロ経済学68回資料編その7

 今回も、『中小企業白書令和2年度版』の資料を利用して、中小企業の課題をみていきます。

 本白書のなかで、中小企業のあるべき姿を提案していますので、それについて考えます。

 同書では、経済産業省の地域未来牽引企業の議論を踏まえて、中小企業の期待される役割・機能を4つに分けて分析しています(詳しくは東京商工リサーチ『中小企業の付加価値向上に関するアンケート』にもとづく)。

 その4つの類型とは、第一は、「グローバル展開をする企業(グローバル型)」、第二は、「サプライチェーンでの中核ポジションを確保する企業(サプライチェーン型)」、第三は、「地域資源の活用等により立地地域外でも活躍する企業(地域資源型)」、第四が、「地域の生活コミュニティを下支えする企業(生活インフラ関連型)」といいます。

 第一のグローバル展開ができる企業がたくさん輩出できれば、外貨が獲得でき、かつ、労働生産性の高い企業なので、これは大変に望ましい企業群です。施策は輸出促進のための支援が中心になると思います。

 第二のサプライチェーン型は、それができる企業は大いにメリットを得ますが、そうでない企業もある程度のメリットがあると考えられます。いいかえれば、地域プラットフォーム企業を創るということでしょう。経済効果でいえば、ネットワークの外部性があるので、その存在は、すべての参加企業にとってメリットがあると考えられます。

 第三は、地域資源型です。地域資源を活用することになるので、それぞれの地域にもメリットが生まれると考えられます。地域・地方が衰退する中、地域資源を活用することは地域活性化にもつながるといえます。

 第四は、生活インフラ関連型ですが、地域に住まう人々に対して様々なサービス提供が中心となると思います。地域の人々の生活の質の向上につながるといえます。

   図表1 4つの類型の労働生産性

[中小企業庁『中小企業白書2020年度版』より引用]

 図表1によると、先に述べた4つのあるべき姿(目標にすべき類型)別に、その中でのパフォーマンスを示しています。

 その4つの類型を、さらに、3つの水準で分析しており、労働生産性は上位25%では、下位25%の2倍から3倍程度となっています。

 これからすると、同じ中小企業のカテゴリーでもかなりの労働生産性の違いがあることが分かります。前回コラムの統計データからすると、上位層は、大企業並みのパフォーマンスを上げていることが分かります。ただし、大企業の中でも、このような差異があると考えれば、大企業のすべての労働生産性が高いわけでもないでしょう。

 中小企業といっても、業種によって基準が異なりますし、小規模事業者や個人事業主ごとにまったく事情は異なると考えられます。世界に冠たるGAFAも、誕生した時は、中小企業でした。その一つであるアップルを除けば、世界企業になったのは2000年以降です。

 どの業種のどの企業が大成功するかは、百にひとつ、千に三つの確率でしょう。

 と考えれば、数多の中小企業が存在してこそ、大成功者(社)が生まれるといえます。今の日本は新規開業率が低いことが問題でもあります。

 また、経営者が高齢化して、後継者もいない中小企業もかなりの数となっています。

 これは経済学の基本ですが、限られた予算の中で、今後成長しそうな企業とそうでない企業、または、頑張っている企業とそうでない企業を選別して、支援配分を考えることが一層重要となるでしょう。

 今回の白書のデータはそれを示唆していると考えます。

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